マードックがGoogleからコンテンツを引き上げるのはGoogleの没落の始まりだ、などというのはとんだ寝言である。おっちょこちょいな中小メディアの中にはマードックの思うツボにはまってGoogleボイコットの呼びかけに追随するところも出てくるかもしれないが、マードックにしてみればそれはオマケの効果にしか過ぎない。統計が示すように一般の検索ユーザーはWall Street Journal始めNews Corpの全媒体がGoogleから消えても、そのことに気付きもしないだろう。逆にNews Corpのページビューが大幅に減るのは絶対に間違いない。マードックがそのデメリットをBingとの提携で補えるかどうか大いに疑問だ。ところが、Sun(と、ニューヨークのPost)についていくらかでも詳しい人間なら、マードックが直接の売上収入よりも部数を常に優先することを知っている。そのためマードックは部数を上げるために定価を自殺的ともいえる採算割れの水準まで引き下げてきた。
しかし、運がいいことに、マードックは検索エンジンを一つに選ぶ必要はない。政治の場合、対立候補を両方推薦することは不可能だ。しかし検索エンジンのレースの場合、勝ち馬を1頭に絞らねばならない理由はないのだ。マードックの腹にあるシナリオは、News Corp のコンテンツは従来どおりGoogleとBingの両方に提供しながら、双方を競わせて最大限のトラフィックと広告収入をNew Corp.に呼び込もうというものだろう。それが現在のキャンペーンの裏の戦略だ。
「金を払えばBingに有利な提携を結んでGoogleのシェアを奪うことができるかもしれない」という希望をMicrosoftに抱かせるのがマードックの狙いだ。これでマードックは労せずして検索結果に対する影響力を大きく拡大することができる。案の定、Microsoftは検索エンジンのウェブサイト・クロールのための次世代プロトコル、ACAPの開発に資金援助することに合意した。ACAPはNews Corpのようなコンテンツ所有者が何を検索エンジンに提供するか、きめ細かいコントロールができるようにする技術だ。




